前田智徳の引退にイチローは何かコメントしたの？

広島カープ

日本球界には様々な「天才」と呼ばれる選手がいます。

世界の最多のホームランを放った王貞治や、日本球界のエンターテイナー長嶋茂雄。

「月見草」と自身を表し、目立たない存在ながらも45歳を超えるまで現役生活を続け、時には選手権監督までこなした野村克也も「天才」と呼ばれる選手のうちでしょう。

最近の選手では稀代のホームランアーティスト・松井秀喜や世界NO1のヒットメーカーであるイチローなどがあげられます。また、投手では甲子園で「怪物」と呼ばれた松坂大輔。

ソフトバンクホークスで最多勝を2回獲得した斉藤和巳、ミスター完投と呼ばれた斎藤雅樹などがあげられるでしょう。そして、打者では広島一筋で活躍した前田智徳も「天才打者」と呼ばれた稀代のヒットメーカーのうちの一人です。

1989年のドラフト4位で野球の名門熊本工業高校から広島東洋カープに指名された前田智徳は当初地元の福岡ソフトバンクへの入団を希望していたこともあり、広島への入団を拒否するものの、その後翻意します。

入団した直後の1990年のルーキーイヤーにいきなり1軍に抜擢され、6月6日のヤクルト戦でデビューするといきなり4打数2安打という衝撃的なデビューを果たします。

1991年には開幕戦で1番センターのスタメンを勝ち取ると6月から打棒を生かしてレギュラーに定着するなど早熟の天才として注目を集めていました。

1992年からは初年度の打率.308を皮切りに3年連続で打率3割を達成し、ベストナインも3年連続で名を連ねるなど名実ともにセリーグを代表する打者に成長したのです。

あのイチローでさえも、この前田智徳のことを「天才」と評するほどの打撃技術は、稀代の物だったのです。それは現在北海道日本ハムファイターズの監督を務める栗山英樹も絶賛しています。

栗山は、前田智徳の打撃技術は「究極のシンプル、シンプル・イズ・ベストといわれる意味の本当の意味が前田選手」と評するほどです。すべての打者がこうやって打つことができたらいいということの大半を無意識に体現しているといわれるほど「理想の打撃」と知られています。

前田智徳の妥協を許さないその姿勢をはっきりしめしたエピソードが、前田が引退した後のインタビューにおいて、野球人生で納得のいった打席について聞かれた際に、「ファールなら一度ある」と答えたことです。

2000本以上の安打を積み上げた打者が納得いった打席が1度だけであり、しかもそれがファールだったという驚愕のエピソードです。野球に対して一切の妥協がない前田智徳らしいエピソードといえるでしょう。

そんな前田をイチローは尊敬していました。イチローの背番号といえば51番ですが、実は前田智徳も入団してからしばらくは51番をつけていました。

そして、イチローはメジャーリーグ、ニューヨーク・ヤンキース時代に、一時期だけ背番号を31番にしていた時期があります。その理由は、ヤンキースの英雄であり、メジャーを代表する選手だったバーニー・ウィリアムスが付けていたからです。

代わりにつけた数字は31番でしたが、この31番も前田智徳がつけていた番号で、たまたまあいていた番号ではあったものの、その中で31番を選んだのはイチローが前田智徳を意識していたからではないでしょうか。

2013年、前田智徳は手首に受けた死球の影響で、試合に復帰することがかなわず引退しました。しかし、イチローは前田の引退に際して何もコメントを寄せませんでした。イチローは様々選手に対して引退時にコメントを残してきました。

しかし、尊敬する前田智徳の引退については、自身が尊敬をしているからこそ、コメントを残すことが失礼に当たるとかんがえてあえてコメントを出さなかったのではないでしょうか。イチローの高い意識が垣間見えるエピソードであるといえます。

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