イチローは内野安打が凄く多いって本当なの?
2016年、メジャーリーグ・マーリンズに所属するイチローが大記録を打ち立てました。
日米通算安打数が、歴代最多記録を持つピート・ローズを超え、4,257本に達しました。
アメリカでは日本時代のヒットを数に入れるか否かで話題になりましたが、当のイチロー本人はあまり気にしていないようです。そんなイチローが打ち立てた4,257本のヒットでクローズアップされるべき数字があります。
それは内野安打の数です。内野安打とは内野にとんで内野手がボールをキャッチしたヒットのことです。当然ながら一塁までの到達速度が内野安打を打つには非常に重要なことです。
プロ野球において一般的な指標は、左打者の一塁ベースを駆け抜けるタイムが何秒か、という点です。この一塁まで走るタイムが4秒を切れば、プロの世界では「俊足」と定義されます。
また、一塁ベースまでの途中にあるスリーフィートラインの前後で、どちらのタイムが早いかを計測することで、その選手がどんな形でバッティングを行っているかみえることもあります。
例えば、走り出してからスリーフィートラインのスタート地点までのタイムが早ければ、その選手は走り打ちをするタイプの選手であるといえます。
反対にスリーフィートラインのスタートから一塁までのタイムが早ければ、バットを振り切って走り出し、トップスピードが非常に速い選手であるといえます。イチローのすごい点は、その2つの打ち方をケースに応じて使い分けているということです。
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イチローは43歳の今もトップ5
43歳になった今シーズンもイチローの一塁到達の最速タイムは3.90秒。ちなみに2015年シーズンは全力疾走した打席の一塁までの到達タイムは3.89秒で、メジャーリーグ全体のトップ5にランクするタイムです。
記録上位の選手はみな、20代前半〜中盤の若い選手が多いため、42歳でもその俊足を維持し続けるイチローのことを、全米メディアも驚きをもって報じています。
通算安打数のうちイチローが内野安打で稼いだ本数は693本で、その割合は23.3%になります。MLB2位の選手は20.5%の割合ですので、その差は歴然たるものです。
1シーズンの内野安打数最多は64本で(2010年)、また、内野安打打率は.207(2009年)で、いずれの数字もメジャーリーグ平均の2倍程度のレベルを維持し続けています。
ちなみに日本時代は毎年コンスタントに30本超の内野安打を打っていました。97年ごろからは従来任されていた1番バッターではなく、3番や時には4番を打っていたこともあり、内野安打の数は減りましたが、それでも多い水準なのです。
しかしながら、そんな内野安打が多いイチローに批判が多いのも事実です。それは、「内野安打だけ打ってもチームへの貢献は低い」という指摘です。野球界で昨今注目されている指標の一つにOPSというものがあります。
これは、その選手の「出塁率」と1打席から期待できる塁打数を求めた「長打率」の足し算から導かれる数字で、OPSが.800を超えると強打者であり.900を超えると一流打者と言われます。
イチローの日本時代のOPSは.923であるのに対し、メジャーリーグでのOPSは.772にとどまります。一部ではメジャーリーグにおけるイチローは「強打者ではなく、コツコツとヒットを稼ぐつまらない打者」とみられている風潮があるのは事実です。
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投手へのダメージは内野安打も同じ
しかしながら、投手へのダメージが大きい内野安打を稼ぎ、塁に出るとその俊足で盗塁を決めるイチローのプレースタイルは、長打や剛速球を是としてきたメジャーリーグに「スモールベースボール」という概念を再認識させています。
2016年6月25日、カブスとの対戦でスタメンに立ったイチローは投手のラッキーと対戦しました。このラッキーは、MLBで一番対戦しているベテラン投手であり、当時までの対戦打率は3割3厘でした。
イチローはこの日もラッキーから内野安打を放ち、チームに貢献しました。反対にラッキーは試合後、「なぜあれがヒットなんだ」とクレームをつけるほど悔しがったといわれています。
このようにイチローの俊足は誰もが恐れる脅威であり、なによりそれを43歳シーズンでも維持し続けるイチローのすごさがわかるエピソードといえるでしょう。
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